心理的安全性

心理的安全性

「心理的安全性(psychological safety)」とは、

職場などの組織やチームの中で、意見や質問、違和感の指摘が、いつでも誰でも気兼ねなく発言できる状態のことです。

何だ、こんな事かと思われる方もおられるかもしれませんが、これが実は重要なことだったのです。

「心理的安全性」は組織行動学の研究者であるエドモンドソン教授が、1999年にこの概念を提唱しました。

エドモンドソン教授の論文では、「チームの心理的安全性とは、チームの中で対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念のこと」と定義されました。

つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。

心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスク(無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動)を取ることに不安を感じていません。

自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地がある状態が心理的安全性の高い状態といえます。

Google社が約4年の歳月と数百万ドルの資金をかけて「効果的なチームを可能とする条件は何か」を見つける目的で行った「プロジェクト・アリストテレス」の研究結果として、「心理的安全性が生産性の高いチームづくりに最も重要である」と発表しました。

 それ以来、世界中にこの考え方が広まり、注目を集めています。

 

「意見を求めても遠慮をして、皆が忌憚のない意見を飛び交わすことができない」、「分からないことを「分からないから教えて欲しい」と素直に申告できない」、「間違いも指摘しあえない」組織やチームでは、隠ぺい体質になり、優秀な人材は流出し、前向きで活発なディスカッションは生まれず、イノベーションを生み出すチャンスを失って淘汰されることとなります。

『心理的安全性のつくりかた』著者である石井遼介氏によると、変化が速く複雑なこれからの社会において、組織を前進させていくためには、下記のような要素が重要となると述べています。

  • 模索・挑戦しながら失敗や実践から学べる組織であること
  • 変化を感じ、工夫や創造できる人材がいること
  • さまざまな視点からの率直な対話ができること

これらは全て、心理的安全性の上に成り立っている要素です。

 

 

 

職場のメンタルヘルス対策

職場のメンタルヘルス対策にも、心理的安全性は効果を発揮します。ストレス負荷のある業務であったとしても、自由に発言し、お互いが協力しあえるチームはストレスに強く、生産性を上げることが出来ます。

上司と部下、あるいは同僚同士でも、遠慮なく意見を交わせる関係性の中では、パワーハラスメントは発生し難いのです。

 

精神的労働災害の要因の最も多いのが人間関係です。精神的労働災害の過半数を占めております。したがって心理的安全性が高いほど労働災害が防げるのです。

 

また、離職する要因にもなっております。仕事が気に入っていても、人間関係がうまくいかなければ、離職につながります。

せっかく縁あって入社したのに、業務ではなく人間関係で離職するのは残念なことです。また、社員教育に時間と労力をかけてきたのも徒労に帰します。