従来のキャリア支援は、失われた10年やリーマンショックなど、景気の変動期に対応するため、就職・転職支援を重視してきました。これからも変動に応じて対応は必要ですが、それだけではなく、むしろ本来のキャリア支援として、「セルフ・キャリアドック」が推奨されております。
「セルフ・キャリアドック」は、厚生労働省によると「企業の人材育成ビジョンに基づき、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援することを目的とした、体系的・定期的なキャリアコンサルティングの実施等からなる統合的な取組のこと」と説明されています。
また、「日本再興戦略改訂2015」では、従業員が社会や組織の変化を先取りする形で変革に対応し、持てる能力を最大限に発揮していくために、従業員が自らのキャリアについて立ち止まって考える「気づきの機会」が必要である、と提言されています。
つまり「セルフ・キャリアドック」とは、個々の従業員が、自分の人生の方向に合わせた、キャリア形成における「気づき」から「キャリアデザイン」を描けるように支援するために、年齢、就業年数、異動、役職などの節目において、従業員が定期的にキャリアコンサルティングを受ける機会を、企業が設定するしくみのことです。
企業の人材育成ビジョンに基づき、入社時や役職登用時、育児休業からの復職時といった効果的なタイミングでキャリアコンサルティングを受ける機会を整備・提供することにより、従業員の活力を引き出し、従業員の仕事に対するモチベーションアップや定着率向上などを図り、ひいては生産性向上や企業の成長とつなげる活動としてセルフ・キャリアドックを位置づけられています。
2016年度からは、「キャリア形成促進助成金」の支給対象となる人材育成制度の一つにセルフ・キャリアドック制度が組み込まれ、セルフ・キャリアドックを制度として就業規則に規定するなどの要件を満たすと、50万円の助成金が受けられます。
【若手(入社時等)】
・キャリアプラン作りの支援を通した職場定着や仕事への意欲の向上
・目標に照らした今後の課題の抽出とその解決策の明確化、実行の動機付け 等
【中堅】
・ライフキャリアの後半戦に向けたモチベーションの維持、中長期的キャリアを見通して必要な能力開発に積極的に取り組む意識の向上
・職場メンバーのキャリア開発に対する理解 等
【シニア層】
・これまでのキャリアの棚卸しと目標の再設定
・職務・責任の変化や新たな環境への適応などの課題抽出とその解決策の明確化、実行の動機付け 等
1、人材育成ビジョン・方針の明確化
(1)経営者のコミットメント
(2)人材育成ビジョン・方針の策定
(3)社内への周知
2、セルフ・キャリアドック実施計画の策定
(1)実施計画の策定
(2)必要なツールの整備
(3)プロセスの整備
3、企業内インフラの整備
(1)責任者等の決定
(2)社内規定の整備
(3)キャリアコンサルタントの育成・確保
(4)情報共有化のルール
(5)社内の意識醸成
4、セルフ・キャリアドックの実施
(1)対象従業員向けセミナー(説明会)の実施
(2)キャリア研修
(3)キャリアコンサルティング面談を通した支援の実施
(4)振り返り
5、フォローアップ
(1)セルフ・キャリアドックの結果の報告
(2)個々の対象従業員に係るフォローアップ
(3)組織的な改善措置の実施
(4)セルフ・キャリアドックの継続的改善